相続の基本知識
相続手続きの流れ
相続が発生すると、様々な行政上の手続を決められた期限までに行う必要があります。
7日以内にやらなければならないこと
死亡届
死亡の事実を知った日から7日以内に医師の死亡診断書を添付して、該当する市区町村の長に提出しなければなりません。
3ヶ月以内にやらなければならないこと
相続放棄
相続人が被相続人の財産及び債務について一切の財産を受け入れないことを「相続放棄」といいます。例えば、被相続人の債務が財産よりも多い場合に「相続放棄」をすることによって借金から免れることができます。相続放棄をするためには家庭裁判所に申し出ることが必要です。
限定承認
被相続人の財産をすべて無限に承継することを「単純承認」といい、これに対し、財産の範囲内でマイ債務も承継することを「限定承認」といいます。
被相続人の借金の額が把握できない場合に使います。
これも家庭裁判所に申し出ることが必要です。
4ヶ月以内にやらなければならないこと
所得税準確定申告
不動産所得や事業所得などの所得税の確定申告が必要な人は毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、翌年3月15日までに前年分の所得の確定申告を行いますが、個人が死亡した場合には、その年の1月1日から死亡の日までの期間の所得を確定申告(準確定申告といいます)しなければなりません。
この申告は原則として、相続人全員が連署で行う必要があり、相続人全員が被相続人の所得税の納税を行う義務があります。
10ヶ月以内にやらなければならないこと
相続税の申告
被相続人の遺産に対して相続税がかかる場合には、相続開始を知った日から10ヶ月以内に相続人全員が相続税の申告をしなければなりません。
相続税は相続人1人1人が実際に取得した財産に対して相続税が算出されるため、申告期限(10ヶ月)までに遺産分割協議が相続人間で整っていることが前提になります。原則的には遺産分割協議も10ヶ月以内という事になります。
相続税の納付
相続税を現金納付する場合には10ヶ月以内に納税しなければなりませんが、その他の納税方法の延納(国に借金する事)や物納(物で納める事)も申告期限(10ヶ月)までに申請書を提出し許可を受けなければなりません。
1年以内にやらなければいけないこと
遺留分の減殺請求
民法では、法定相続人が必ず相続することができるとされている最低限の相続分(=遺留分)が保証されています。万一、遺言によって遺留分未満の財産しかもらえなかったときには、遺留分を侵した相手に対して相続の開始から1年以内に「遺留分の減殺(げんさい)請求」を行うことで、これを取り戻すことができます。
3年10ヵ月以内にやらなければいけないこと
相続税の特例適用のための分割期限
相続税の軽減特例である「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の評価減」「特定事業用資産の特例」の適用は、遺産分割協議が整っていることが適用要件となっているため、申告期限(10ヶ月)までに協議が整っていない場合には、適用ができない内容の申告となります。
その後、3年以内に協議が整えば、その時に特例を適用する申告内容に訂正することができます。
相続財産を譲渡した場合の所得税の譲渡の特例(取得費加算)は、その譲渡が相続税の申告期限から3年以内に行われたときだけに限られています。
以上、期限のある手続きについてお話いたしましたが、全部を行うわけではありません。
ただし、知らなかったでは済まされないのが、この期限のある手続きです!
もしも、日程が迫っているが、時間の調整が着かないという方は、すぐにお問合せください。
相続人と財産の確定
ご相続が発生した場合、どの財産を相続するのか、その財産がいくらになるのか、に目が行きがちですが、それ以前に誰が相続財産を受け取る権利があるのかを確定する必要があります。
「だいたい分かるから、調べなくても大丈夫。」と思っていると、思わぬ事態に陥ってしまう場合があります。
予期しなかったような人が相続人として出てくることも少なくありません。
それが早い段階であれば良いのですが、遺産分割協議がまとまった後だと大変な手間が掛かります。
誰が相続人であるかをしっかりと把握することは非常に重要です。
遺言や死因贈与契約がなく、法定相続で相続する場合は、しっかりと相続人を把握しないと、想像もしなかったような人が相続人として出てきて相続財産を取得する可能性があります。
また、どのような財産が相続遺産の対象になるのかをしっかりと把握しましょう。
相続人調査と法定相続
ここでは、相続において最も重要な相続人調査について説明いたします。
誰が相続人なのかを調べるためには、亡くなった方の「戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍」等を出生から死亡まですべて取得します。
この相続人調査・戸籍調査を怠ると、相続手続きが滞るばかりでなく、後々思いもよらない相続人が発覚し遺産分割協議のやり直しやトラブルに発展することもあります。
相続における、相続人調査はとても重要なポイントとなります。
「相続人が誰になるかは、だいたい分かっている」というような場合であっても、必ず戸籍を収集して相続人が誰であるかを客観的な資料をもって証明する必要があります。
法定相続とは
ここでは、相続で最も重要となる法定相続についてご説明します。
法定相続とは、被相続人が遺言を残さずに亡くなった場合、民法により決められた相続人へ決められた相続分が渡ることを言います。
遺言が残されなかった場合は、どんなに個別的な、特別な事情があったとしても、原則、すべてこの法定相続によることになります。
法定相続人
法定相続人とは、被相続人が亡くなったときに、相続する権利がある人をいいます。
この権利は、民法で定められていて、以下の人が法定相続人になることができます。
1. 配偶者(夫からみれば妻、妻からみれば夫)
ただし、婚姻関係のない内縁の妻や、愛人には相続権がありません。
2. 子供(=実子)、養子、内縁の妻や愛人の子供、胎児、あるいは孫、ひ孫
これらの人を直系卑属(ひぞく)といいます。民法では、子供、養子が何人いても、全て法定相続人となります。
しかし養子については、相続税法上では被相続人に子供がいる場合、法定相続人としては1人だけが認められ、子供がいない場合は、2人までが認められます。
簡単にいうと、相続税法上では養子については、1人あるいは2人までしか税金の控除がないということです。
3. 父と母、あるいは、祖父母
直系卑属が誰もいないときに、相続人になることができます。
父と母がいないときは、祖父母が相続人になり、これらの人を直系尊属といいます。
4. 兄弟姉妹、あるいはその子供
被相続人の直系卑属や直系尊属が、誰もいないときにはじめて相続人となることができます。
以上が法定相続人となることができる人です。
法定相続分
「法定相続分」とは、法定相続によって相続人に相続される相続財産の割合をいいます。
法定相続分を知ることは、誰にいくらが相続されるのかを知るひとつの目安となります。
遺言書は、亡くなった方の自由意志を反映させるものですが、後々もめないようにするには、作成時にまず参考にされるべきものが法定相続分なのです。
法定相続人の順位または割合
- 子と配偶者 子=二分の一 配偶者=二分の一
- 配偶者と直系尊属 配偶者=三分の二 直系尊属=三分の一
- 配偶者と兄弟姉妹 配偶者=四分の三 兄弟姉妹=四分の一
相続財産とは
相続財産とは、被相続人が相続開始時点で持っていた財産をいいます。この財産には、現預金や不動産、株式などのプラスの財産のみならず、借金などのマイナスの財産も含まれることになります。
また、被相続人が相続開始時点で持っていた財産でも相続財産に含まれないものもあります。
「相続財産については、原則として、「すべて相続するか」「すべて放棄するか」を選択する必要があります。
従いまして、相続が発生して2ヶ月以内の早い時期、どんなに遅くとも3ヶ月以内には相続財産額がプラスなのかマイナスなのかくらいは確認できる調査が必要となります。
「ちゃんと財産は把握できているから」と思っていても、予期せぬ相続財産がでてきて後々もめるというケースが多々あります。
プラスの財産
不動産(土地・建物) | 宅地・居宅・農地・店舗・貸地など |
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不動産上の権利 | 借地権・地上権・定期借地権など |
金融資産 | 現金・預貯金・有価証券・小切手・株式・国債・社債・債権・貸付金・売掛金・手形債権など |
動産 | 車・家財・骨董品・宝石・貴金属など |
その他 | 株式・ゴルフ会員権・著作権・特許権 |
マイナスの財産
借金 | 借入金・買掛金・手形債務・振出小切手など |
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公租公課 | 未払の所得税・住民税・固定資産税 |
保証債務 | 実際に債務を有していなくても、債務保証したことにより将来発生しうる保証金 |
その他 | 未払費用・未払利息・未払の医療費・預かり敷金など |
遺産に該当しないもの
- 財産分与請求権
- 生活保護受給権
- 身元保証債務
- 扶養請求権
- 受取人指定のある生命保険金
- 墓地、霊廟、仏壇・仏具、神具など祭祀に関するもの
などがあります。
遺産の評価をどうするか?
民法上の相続財産を引き継ぐ手続きでは、評価方法は具体的に定められておらず、一般的には、時価で換算することになります。
ただ、相続財産の評価では、評価方法により相続税の評価額が変わってきたり、民法と税法上では、相続財産の範囲とその評価方法の取り扱いが異なります。
そのため、相続財産評価には専門的な判断が必要となります。
みなし相続財産とは
ここでは、相続税課税の対象となる「みなし相続財産」についてご説明します。
「みなし相続財産」とは、相続人が不動産や預貯金を直接相続していなくても、間接的に財産を取得したときは、実質的に「相続した」とみなされるものをいいます。
ですから、相続した財産と同様に、みなし相続財産には相続税が課税されます。
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