相続税申告の流れと期限
相続が発生すると、遺産の整理や分割だけでなく、税務上の手続きも避けては通れません。
特に相続税の申告は、複雑な計算や必要書類の準備が求められるうえ、申告期限が法律で厳しく定められています。
期限を過ぎてしまうと、延滞税や加算税といった余計な負担が発生してしまうため注意が必要です。
今回は、相続税申告の基本的な流れと具体的な期限をわかりやすく解説します。
相続税の申告が必要になるひと
相続税を申告しなければならないのは、相続や遺贈などで受け取った財産の合計額が「基礎控除額」を超える場合です。
基礎控除額は次の計算式で求められます。
3000万円+(600万円×法定相続人の数)
たとえば相続人が2人なら、3000万円+(600万円×2)=4200万円までは非課税となります。
遺産総額が上記を超えると、相続税の申告が必要です。
相続税申告の流れ
相続税申告の流れは、以下のステップで進められます。
①相続人と相続関係を確定する
②財産と負債を漏れなく洗い出す
③各財産を相続税評価額に直す(評価)
④課税遺産総額の算定
⑤遺産分割協議
⑥申告
それぞれ確認していきましょう。
①相続人と相続関係を確定する
被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍、相続人全員の戸籍を集め、誰が相続人かをはっきりさせます。
借金などマイナスが大きい可能性があれば、相続放棄や限定承認を検討してください。
期限は原則として「相続の開始を知ったときから3か月以内」であり、これを過ぎると原則として単純承認(すべて承継)と扱われます。
②財産と負債を漏れなく洗い出す
財産と負債とは、以下のようなものを指します。
- 現金・預貯金
- 証券口座(株式・投信・債券)
- 不動産(宅地・家屋・農地・山林・私道等)
- 生命保険金や死亡退職金(みなし相続財産)
- 自動車・貴金属・美術品
- 貸付金・売掛金
- 仮想通貨
- 借入金
- 未払税金・医療費
- 葬式費用
預貯金や証券、不動産のようなわかりやすい資産だけでなく、生命保険金や退職金といった「みなし相続財産」も対象に含まれます。
金融機関からは死亡日現在の残高証明を、不動産については固定資産評価証明を取得するなど、客観的な資料をそろえてください。
③各財産を相続税評価額に直す(評価)
財産の洗い出しができたら、それぞれの評価を相続税法のルールに従って行います。
預金や上場株式は比較的容易に評価できますが、不動産は路線価や倍率方式に基づく計算が必要となり、土地の利用状況や借地権の有無によって評価額が大きく変わることがあります。
また、非上場株式や海外資産を含む場合は専門的な判断が不可欠です。
④課税遺産総額の算定
評価額が確定すると、そこから課税価格を算出します。
前述のように、基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。
⑤遺産分割協議
相続人同士で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を取得するかを決めます。
仮に期限までに分割協議がまとまらなかった場合でも、申告そのものは必ず期限内に行わなければなりません。
⑥申告
最終段階では、申告書を作成して被相続人の住所地を管轄する税務署に提出します。
提出方法は窓口や郵送のほか、近年ではe-Taxによる電子申告も可能です。
納税は原則として現金一括ですが、金額が多く1度に支払えない場合には延納や物納といった制度を利用できる場合もあります。
申告後は、相続財産の名義変更手続きも進めなければなりません。
銀行口座の解約や不動産の相続登記、株式や自動車の名義変更など、相続税の申告と並行して処理すべき事務はさまざまです。
相続税申告の期限
以下、相続税申告の期限に関する基礎知識を解説します。
期限は「10か月以内」
相続税の申告書を提出する期限は、被相続人の死亡によって相続が開始したことを知った日の翌日から10か月以内と定められています。
たとえば令和6年6月11日に亡くなった場合、その翌日である6月12日から起算して、令和7年4月11日が申告期限となります。
もし10か月目の日が土曜日・日曜日や祝日に当たる場合は、その翌平日が期限に繰り下がります。
上記は国税通則法の定めによるもので、確定申告など他の税務手続きと同じ扱いです。
期限を過ぎるとどうなるか
期限を過ぎてしまうと、延滞税や加算税といったペナルティが課されます。
延滞税は申告が遅れた日数に応じて加算され、さらに申告漏れや過少申告があった場合には「過少申告加算税」「重加算税」が課されることもあります。
余計な税負担を避けるためにも、期限を厳守しましょう。
まとめ
相続税申告は、被相続人の死亡によって相続が始まった翌日から10か月以内という明確な期限が法律で定められています。
限られた期間で、財産の調査や評価、遺産分割協議を行い、正確に申告・納付を済ませなければなりません。
相続税は、控除や特例の適用次第で大きく税額が変わるため、知識や経験がないまま手続きを進めると不要な税負担を抱えてしまう可能性もあります。
スムーズに相続を進め、納税リスクを避けるためにも、早い段階から税理士に相談することをおすすめします。
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