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相続税申告が必要となる基準とは?不要なケースも併せて解説

相続が起きたとき、相続税の申告が必要かどうかは多くの方が疑問に思うポイントです。

基礎控除内の財産なら申告は不要ですが、特例適用の場合は税金がかからなくても申告が求められるケースがあるため注意しましょう。

本記事では、相続税申告が必要かどうかを見極めるための重要な判断基準と、申告が必要な場合、不要な場合について解説します。

相続税申告が必要かどうかのポイント

相続税には、非課税となる「基礎控除」という仕組みがあります。

この制度は相続人全員に適用される非課税枠であり、相続する財産の総額が範囲内に収まるなら申告は不要です。

基礎控除額は「3,000万円に法定相続人の人数に600万円をかけた金額を足した額」となります。

たとえば、4人の法定相続人がいる場合、控除額は5,400万円です。

相続で受け取った財産がこの金額を下回るなら、相続税の申告手続きをする必要はありません。

相続時の税金対策を考える際の重要な基準となる制度です。

相続税が発生する時は申告が必要

基礎控除や特例を使っても課税対象となる金額が残る場合は、申告が必要です。

課税額が1円でも発生すれば必ず申告しなければなりません。

この場合、相続を知った日の翌日から10か月以内に申告を行うことが求められます。

期限を守って適切に手続きを行いましょう。

「相続税の支払いが不要=申告も不要」ではない

基本的に、相続によって取得した財産の額が課税対象に満たない場合、相続税の納付義務はありません。

しかし、特別な控除や特例によって税額がゼロになる場合は例外です。

特例を適用するためには、申告が必須となるケースが存在するため注意が必要です。

特例適用と申告義務には密接な関わりがあるため、以下で具体的に解説します。

配偶者の税額軽減制度を利用した場合

配偶者の税額軽減制度を使いたいと考える場合は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告することが必須となります。

この制度では、配偶者の相続分に応じて課税判定と税額計算が行われるのが特徴です。

期限内に遺産分割が間に合わなくても、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告すれば対応できます。

その後、3年以内に遺産分割を完了させ、改めて申告手続きをすることで軽減措置を受けることが可能です。

この特例を活用すると、配偶者の税負担を大きく軽減できるため、たとえ計算上相続税がゼロ円になったとしても、適切な申告手続きが必要です。

小規模宅地等の特例を利用する場合

小規模宅地等の特例を利用すると、被相続人が暮らしていた土地や事業用地を引き継いだ時に、特定の条件下で評価額が大幅に軽くなります。

住まいとして使われていた土地は、330㎡までの部分について評価額を80%減額が可能です。

住居用の土地なら評価額の20%だけが遺産の合計に含まれるため、納付すべき相続税がゼロ円になる可能性はかなり高まるでしょう。

ただし、この特例を適用するには必ず期限内に相続税申告を行うことが条件です。

「税金がかからないから申告は不要」という考えは誤りです。

申告を忘れると特例が使えなくなり、本来支払わなくてよかった相続税を納めることになりますので注意しましょう。

公益法人などへの寄付による非課税の特例を利用した場合

相続によって承継した財産を国や公共団体、公益法人へ寄付すると、その部分に相続税はかかりません。

ただし、この特例を利用するには申告期限内の手続きが絶対条件です。

農地の納税猶予制度や特定計画山林に関する特例についても、申告しなくてはいけないため、該当する場合は忘れないようにしましょう。

基礎控除額を下回る場合以外に相続税申告が不要となるケース

相続税は基本的に、税金が発生する状況においては申告手続きを行うことが義務づけられています。

ただし、相続によって引き継いだ財産の合計額が、法律で定められた基礎控除額よりも少ない状況や、特定の条件に当てはまる状況では申告手続きは不要です。

各種控除を利用するケース

相続税計算には申告不要の控除と、申告手続きが必要となる控除があります。

遺産総額が基礎控除を超えていても、障害者控除や未成年者控除などの申告不要控除を使うことで、最終的な税金がゼロになる場合は申告義務がありません。

判断に迷ったり不安を感じたりするときは、専門家への相談がおすすめです。

障害者控除を利用するケース

障害者控除は、法定相続人が85歳未満で障害がある場合に活用できる制度です。

一定の条件を満たせば、計算式によって求めた金額が税額から減額されます。

一般障害者に該当するなら「(85歳-相続時の年齢)×10万円」、特別障害者に該当するなら「(85歳-相続時の年齢)×20万円」で計算可能です。

日本の相続税制度では障害者を「一般障害者」と「特別障害者」の2種類に区分しています。

年齢の計算では1年未満の月数は切り捨てるため、たとえば752か月の方は75歳となります。

当該控除を利用することで、障害のある相続人の税負担を軽減することができるのです。

18歳未満の相続人が活用できる未成年者控除のケース

未成年者控除は、相続人が18歳未満の場合に利用できる制度です。

(18歳-相続発生時の年齢)×10万円」という式で算出した金額を、税額から差し引くことができます。

年齢の計算では、1年未満の月数は切り捨てるため、たとえば158か月の場合は15歳として計算します。

控除を受けるには、以下の条件をすべて満たす必要があるので注意してください。

 

  • 法定相続人であること
  • 相続発生時に未成年であること
  • 相続や遺贈で財産を受け取ること
  • 相続発生時において国内に住所を持っていること(特例あり)

まとめ

相続で受け取った遺産の合計金額が一定額以下の場合、相続税を税務署に申告する必要はありません。

しかし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を利用する際は、最終的に税金がゼロ円になっても申告が必須です。

一方、障害者控除や未成年者控除の適用で税額がゼロになれば申告は不要です。

判断が難しい場合には、相続税の専門知識を持つ税理士への相談をおすすめします。

相続にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。